山里ぽん太

5 Cirrus

07 October 2018

山里ぽん太は絹雲を5個作りました。


Chapter 1 絹雲
絹雲は、細い糸や筋のような雲です。
Houdini のシェルフツールには、「もくもくの雲」をつくるボタンはありますが、絹雲をつくるボタンはありません。
というわけで、絹雲を作ってみましょう。
Chapter 2 ボリュームで雲の筋をつくる その1
絹雲といっても雲ですから、Houdini に用意された、優れたボリューム機能を使って作りましょう。
Volume Trek で、シェルフツールの Volume を試した理由は実はコレでした。
いろいろ試行錯誤した結果、とりあえず、このシンプルなネットワークで試してみました。

レンダリングしたものです。
これが絹雲の筋の一本になります。
これをたくさん作って、束ねて絹雲にすることになります。

ちなみに、試行錯誤していた図です(笑)。

Chapter 3 ボリュームで雲の筋をつくる その2
Chapter 1 の雲の筋は、ちょっと輪郭がはっきりしすぎているので、もっとぼんやりとできないかな、と思って、パラメータを調整しました。
少しよくなったでしょうか?。

10本束ねてみました。

Perlin ノイズで筋の間隔にばらつきをつけて、レンダリングしてみました。
空に溶け込むような雲になりました。

ネットワークはこんなのです。

Chapter 4 Line で雲の筋をつくる
Chapter 3 で作ったネットワークから、「Volume Rasterize Curve」ノードを取り除いてレンダリングしてみました。
イメージは、こちらのほうが近いです。
というわけで、コレで進めてみましょう。

Chapter 5 フォースで絹雲の形を作る
Chapter 4 で作った雲の筋の端の部分を乱してみました。
これは、VEXpression で Perlin ノイズのフォースを加えて乱しています。

レンダリングするとこうなります。
ちょっと「らしく」なりました。
May the Force be with you .

Chapter 6 ベクトルフィールドの復習
雲の形を乱すのに、ベクトルフィールドも使えそうです。
絹雲の形は気流で作られますので、ベクトルフィールドなら、いろんな気流を表現するのに都合が良いと思います。
というわけで、佐久間修一著「理論と実践で学ぶHoudini -SOP&VEX編」を引き出しから取り出して、復習しました。

Curl ノイズでベクトルフィールドを作って、Visualizer をつないでみました。

Chapter 7 ベクトルフィールドで絹雲の形を作る
というわけで、作ってみました。
左端、中央、右端、と3つのベクトルフィールドを作りました。
左端と右端は乱気流で、中央は右に流れる乱れのない気流です。

こんなネットワークになっています。

Chapter 8 絹雲の筋の端を細くする
絹雲の筋の端を細くする処理を追加しました。

斜めから見ると、こんな感じです。

まだ完全ではありませんが、だいたいできたかな、というところです。
Chapter 9 5 Cirrus
というわけで、Chapter 8 の絹雲をもとにして、ブラッシュアップしながら、いろいろな絹雲を作ってみましょう。
アイデア出し10個にしようかと思ったのですが、細かい調整がけっこうたいへんなことがわかったので、アイデア出しは5個にします。
ひとつのアイデアで、無背景の絵と、写真に合わせた絵を作ってみましょう。
ところで、「Cirrus」の複数形は「Cirri」ですが、わかりにくいので、複数でも「Cirrus」と書きます。
Chapter 10 5 Cirrus その1
というわけで、最初の絹雲はこれです。

ゲジゲジみたいです(笑)。
空の写真に配置してみたものはこれです。

現実には、こんなに強力な雲にはなりません。
空の中の一部分に少し現れるくらいです。
この絹雲は、ベクトルフィールドで作っています。
Chapter 11 5 Cirrus その2
というわけで、2つ目の絹雲はこれです。

ゲジゲジ雲の片側です。
羽箒みたいな雲です。
空の写真に配置してみたものはこれです。

現実には、穏やかな空の一部分に、ミストのような薄い雲と一緒に現れるようです。
この絹雲も、ベクトルフィールドで作っています。
Chapter 12 5 Cirrus その3
というわけで、3つ目の絹雲はこれです。

飛行機雲のような、まっすぐな絹雲です。
これはよく現れます。
空の写真に配置してみたものはこれです。

現実には、やはりこんなに強力ではなくて、空の一部に、すっ、と線を描くように現れるようです。
この絹雲は、フォースで作っています。
Chapter 13 5 Cirrus その4
というわけで、4つ目の絹雲はこれです。

綿飴のような絹雲です。
これもよく現れます。
空の写真に配置してみたものはこれです。

現実には、こんな養殖海苔みたいに現れることはなくて、しかも、形はいろいろです。
この絹雲は、ベクトルフィールドで作っています。
Chapter 14 5 Cirrus その5
というわけで、5つ目の絹雲はこれです。

絹の布のような絹雲です。
空の写真に配置してみたものはこれです。

これも、現実にはこんなに強力ではないのですが、山の稜線の向こう側から、上昇気流に乗って、羽衣のような絹雲が現れることがあります。
とても美しいものです。
この絹雲は、フォースで作っています。
Chapter 15 メモ
① 今回の作例も「成長」するモデルです。ポイントをベクトルフィールドやフォースで動かして、タートルグラフィックスのように軌跡を描くことで、絹雲の筋を描いています。「成長」をうまくコントロールすることはなかなかに難しくて、何度もなんども試行錯誤を繰り返しました。

② このページに、Pyro の煙のシミュレーション結果で、ラインを動かすテクニックが紹介されています。煙はボリュームですから、絹雲の、ミストのように見える部分を描くことができるかもしれません。

③ 今回の作例は、Point と Line だけを使って、Primitive を使わずに、太さを @width アトリビュートで指定しています。この作り方は、モデリングの負荷がとても軽いことに気がつきました。今回の作例の最後の5個は、MacBookAir で作りましたが、シーンビューの表示も速く、モデリング(シミュレーション)も十分速いレスポンスで、快適に作業することができました。

④ @width の値を小さくして、密度を高くすると、ミストのような効果も出て、リアルに近づきます。しかし、同時に、負荷が増えます。処理時間が数分となったところでアクティヴィティモニタでメモリの使用量を見たところ、「Houdini」だけで30GBくらい使用していました。実際には、「Houdini」以外のところでも使用していますので、ちょっと困った使用量になっていたはずです。もしかすると、大量にページングされていたかもしれません。負荷を軽くする工夫はいくつかしたつもりですが、もっと軽くできるかもしれません。Chapter 10 からの5つの作例はすべて MacBook Air で作ったもので、だいぶ負荷は軽くなっていると思います。